「要支援」と「要介護」って何が違うの?8つの区分の状態と受けられるサービス

介護保険の認定結果は「要支援1・2」「要介護1〜5」の8区分。名前は知っていても、実際に何が変わるのか(使えるサービス・上限・費用・契約窓口)は意外と分かりにくいものです。

本記事では、各区分の状態像使えるサービスの整理、認定の決まり方や見直しのタイミング、家族が抑えるべき費用の考え方までを、表と具体例でシンプルに解説します。

要支援/要介護の違い(全体像)

「要支援」は生活機能の低下を予防・改善するための支援が中心で、地域包括支援センターがプランの主窓口になります。一方で「要介護」は日常生活に継続した介助が必要な状態で、居宅介護支援事業所(ケアマネ)がケアプランを作成します。

どちらも目的は本人の自立とQOLの維持ですが、サービスの設計思想月の利用上限(区分支給限度額)、選べるサービス種別に違いがあります。以下で区分ごとの状態像と使い分けを具体的に見ていきます。

用語のミニ解説

要支援:予防重視(筋力・栄養・口腔・社会参加)/要介護:介助重視(入浴・排泄・移乗・食事・見守り)。どちらも状態が変われば再認定で区分は上下します。

8つの区分とおおまかな状態像

区分は「できること・見守りの要否・介助の頻度」などの総合評価で決まります。下の早見表は目安であり、最終判断は認定結果に従います。

同じ区分でも、昼と夜・環境・合併症で必要な支援は変わります。表はケア会議の出発点として使い、個別のアセスメントで調整しましょう。

区分早見表(状態像のめやす)

区分 状態像のめやす 主な支援の焦点
要支援1 基本動作は自立だが一部に不安(転倒・買い物・掃除) 体力維持・家事支援・社会参加の継続
要支援2 家事全般に負担、入浴など一部に見守りが必要 生活動作の訓練と環境調整、予防的サービス
要介護1 日常の一部で部分介助(入浴・更衣・移動) 安全確保・転倒予防・生活リズムづくり
要介護2 見守り+部分介助が増える、外出やトイレに支援 入浴・排泄動作の安定、住環境・用具導入
要介護3 立ち上がり/移乗で介助、夜間の見守りが必要 介助導線の最適化、褥瘡・誤嚥の予防
要介護4 多くのADLに全面介助、車いす主体 褥瘡・拘縮予防、ポジショニング、口腔衛生
要介護5 ほぼ全介助、医療的観察が常時必要なことも 呼吸・嚥下・栄養管理、24時間の安全確保

認定はどう決まる?いつ見直す?

認定は、認定調査(聞き取り・動作確認)主治医意見書を基に審査会で決定されます。家庭での実際の様子(夜間・排泄・食事量・転倒回数など)の記録が、判定の精度を高めます。

区分は原則有効期間あり(更新制)。入退院や転倒増加、介助頻度の急増など大きな変化があれば、更新を待たずに区分変更の申請が可能です。

認定調査と主治医意見書のポイント

「できる/できない」だけでなく、どの程度・どの頻度で支援が必要かを具体例で示しましょう。嚥下や栄養、夜間行動、服薬状況、口腔状態は重要項目です。

見直しのタイミング

転倒・入退院・体重の急変・夜間介助の増加・認知症症状の顕在化などは、区分見直しのサイン。記録を添えて早めに相談を。

受けられるサービスの違い(在宅・施設・地域)

要支援は「介護予防・日常生活支援総合事業」を中心に、通い・訪問・体力維持の取組を組み合わせます。要介護では、訪問介護・訪問看護・通所介護/リハ・短期入所など介助量に応じた組み立てが可能です。

施設系は目的で選びます。長期生活の場(特養)、在宅復帰重視(老健)、医療的管理+生活(介護医療院)など、何を優先するかで最適解が変わります。

在宅系の使い分け

日中の見守りは通所、夜間の不安は福祉用具や訪問介護、医療的観察は訪問看護を軸に据えます。口腔・栄養・排泄の連携が生活安定の鍵です。

施設系の使い分け

「長期に暮らす」「在宅へ戻る」「医療管理を優先」のいずれを主軸にするかで、特養・老健・介護医療院の適合性が決まります。見学と重要事項説明書の確認は必須です。

区分 主な在宅サービス例 施設サービスの主軸
要支援1・2 介護予防通所(運動・口腔・栄養)、生活援助中心の訪問、見守り機器 原則は在宅中心(必要時に短期入所)
要介護1・2 通所介護/リハ(週1〜3)、訪問介護の部分介助、訪問看護の定期観察 老健で短期の在宅復帰支援を活用する選択肢
要介護3 通所+訪問介護の併用、夜間不安に用具導入、口腔・嚥下支援 特養(長期生活)や老健(在宅復帰)を併用検討
要介護4・5 複数回の訪問介護・看護、福祉用具・住宅改修、ショートの計画利用 特養・介護医療院(医療的管理+生活)

費用と「区分支給限度額」の考え方

在宅サービスの多くは、区分ごとに月の保険適用上限(区分支給限度額)が設定され、その範囲内で1〜3割負担です。上限を超えた分は全額自己負担になります。

施設入所では、介護サービス費の自己負担に加え、食費・居住費・日常生活費などが発生します。所得要件を満たせば負担限度額認定で食費・居住費が軽減される場合があります。

費用の見方(在宅)

「必要な時間帯に必要な量」を優先し、初月は控えめに開始→2〜4週間で見直しがコスパ良。訪問看護・口腔・栄養の連携は再入院予防に直結し、結果的に負担の抑制につながります。

軽減制度のポイント(施設)

住民税非課税等で食費・居住費の軽減が受けられる可能性があります。負担割合証・預貯金の確認書類を準備し、早めに窓口へ相談しましょう。月内の自己負担が上限超なら高額介護サービス費の払い戻し対象です。

ケースで理解する“区分×サービス設計”

同じ区分でも生活環境で設計は変わります。以下の3例は、プラン作成時の発想を具体化するための一例です(実際は個別評価に基づき調整)。

いずれも家族の休息安全の確保を最優先に、在宅か施設かの選択を柔軟に考えます。

ケースA:要支援1(独居・転倒不安)

週1の通所で筋力・バランス訓練+口腔体操。買い物・掃除は総合事業の訪問型サービスを短時間導入。見守りセンサーで夜間不安を軽減。

ケースB:要介護3(夜間の見守り増・移乗に介助)

通所介護を週2〜3回、訪問介護で排泄・入浴の部分介助、訪問看護で褥瘡・嚥下を定期観察。ベッド・手すり・ポータブルトイレの用具導入で介助負担を下げる。

ケースC:要介護5(全介助・医療的観察あり)

複数回の訪問介護と訪問看護、経管栄養や吸引の有無に応じた医療連携。短期入所で家族の休息を確保しつつ、介護医療院や特養も選択肢として検討。

サービス選定・見直しのコツ

初回は「安全(転倒・誤嚥)」「夜間(睡眠・排泄)」「介護者の休息」に資源を配分し、慣れてきたら活動性や楽しみの時間へ広げます。最初から上限一杯に詰め込まず、小さく始めて改善するほうが定着します。

事業所と相性が合わない・時間帯が合わない場合は、遠慮なく変更を。ケアマネに課題と希望時間帯を具体的に伝えると調整が速くなります。

チェックリスト(見直しの合図)

  • 転倒・誤嚥・夜間介助が増えた/食事量や体重が変化した
  • 服薬ミス・徘徊・帰宅願望などの危険行動が増えた
  • 家族の疲労が蓄積し、休める時間がなくなってきた

一つでも該当すれば、ケアマネや地域包括へ連絡し、区分やプランの見直しを検討しましょう。

まとめ

「要支援」は予防と自立支援、「要介護」は介助量に応じた生活支援という違いがあります。区分はゴールではなくスタート。状態と生活の変化に合わせて、サービスは柔軟に組み替えていきましょう。

迷ったら、困りごとの記録を持ってケアマネ/地域包括へ。小さく始め、早めに見直す——それがムリなく続く介護の近道です。

よくある質問(アコーディオン)

「要支援」と「要介護」の違い、8区分の見直しや費用、使えるサービスの範囲について、家族から寄せられやすい疑問をQ&A形式でまとめました。各項目をクリック/タップで回答を開閉できます。

最終的な運用は自治体や事業所で異なる場合があります。契約前に重要事項説明書・契約書で必ず確認してください。

Q. 「要支援」と「要介護」は何が違う?窓口はどこ?

A. 要支援は予防重視で、主窓口は地域包括支援センター。要介護は日常生活で継続的な介助が必要で、居宅介護支援事業所(ケアマネ)がケアプランを作成します。

Q. 8区分(要支援1・2/要介護1〜5)の違いはどう決まる?境目は?

A. 認定調査と主治医意見書に基づき、できる動作・見守り要否・介助頻度などの総合評価で区分が決まります。境目は「見守り中心か、介助が恒常的に必要か」が目安です。

Q. 区分はいつ見直せる?有効期間中でも変更できる?(区分変更申請)

A. 入退院・転倒増加・夜間介助の増加など状態変化があれば、更新を待たずに区分変更申請が可能です。記録(頻度・時間帯)を添えると反映されやすくなります。

Q. 要支援でも訪問介護は使える?要介護になると何が増える?

A. 要支援では総合事業の訪問型(生活援助中心)や通い(運動・口腔・栄養)が中心。要介護になると身体介護通所介護/通所リハ・短期入所・訪問看護など選択肢が広がります。

Q. 区分ごとの「区分支給限度額」(月の上限)って何?超えたらどうなる?

A. 在宅サービスに使える月額の保険適用上限です。この範囲は1〜3割負担、超過分は全額自己負担になります。初月は控えめに開始し、2〜4週間で見直すのがコツです。

Q. 認知症があると区分は上がる?BPSDが強い場合はどう扱われる?

A. 記憶・判断・見当識低下による見守り/介助の必要度が評価対象。徘徊・不眠・帰宅願望などBPSDは安全確保の負担として反映されます。日々の記録が有効です。

Q. 施設サービス(特養・老健・介護医療院)は区分で利用可否が変わる?

A. 一般に要介護1以上で検討対象(老健は在宅復帰目的、特養は長期生活、介護医療院は医療+生活)。要支援は原則在宅中心で、短期入所は個別に要件確認します。

Q. 施設の食費・居住費が高い…軽減はある?(負担限度額認定・高額介護サービス費)

A. 住民税非課税等の要件で負担限度額認定により食費・居住費が軽減される場合があります。月の自己負担が上限超なら高額介護サービス費の払い戻し対象です。

Q. 判定が「非該当」または軽すぎると感じたら?再申請のポイントは?

A. 異議申立て/区分変更申請が可能です。転倒回数・夜間介助・食事量・失禁などの頻度記録と主治医の所見を補強し、実態を反映させましょう。

Q. ケアマネや事業所は途中で変えられる?合わない時の対処法は?

A. 変更可能です。理由(時間帯不一致・対応・専門性)を整理し、ケアプラン更新と受け入れ日の調整を行ってから切替えましょう。ケアマネ費用は保険給付内で自己負担なしです。

Q. 医療的ケア(胃ろう・在宅酸素など)があると区分やサービスは変わる?

A. 医療的観察や手技の必要度は評価・サービス設計に影響します。訪問看護の活用、嚥下・口腔・栄養の連携、夜間体制の確認を行い、必要なら施設(老健・介護医療院等)も検討します。

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